ウイルスについて・その1

いよいよウイルスについて話す。んが、ウイルスの全てを話すと、これも本一冊になってしまうので、特定のウイルスに限定して話す。
まずはウイルスの構造を理解「しないで」、ウイルスの働きについて一番単純に解説する。
今回説明に使うのは「一本鎖RNA(+)」という種類のウイルスで、A型・C型肝炎ウイスル、ポリオウイスルなどが代表例である。
DNAについてを前提にすると、ウイルスはタンパク質でできた外殻と、その中に1本のRNAが入っている。さて、このウイスルが生物の細胞にくっつくと、外殻を置いて、このRNAだけが内部に送り込まれる。
この「一本鎖RNA(+)ウイルス」のウイルスRNAはmRNAに互換性があるので(無いものは(-))、ウイルスRNAがタンパク質製造工場であるリボソームに送られると、リボソームはウイルスRNAを元にタンパク質を合成してしまう。この勝手な設計図で合成されたタンパク質の役割は、例えばタバコモザイクウイルスという、RNA核酸の数が6400個しかない極めて単純ウイルスの場合、以下の4つのタンパク質情報を持つ。

  • ウイルスRNAを複製する酵素RNAポリメラーゼ(2種類のタンパクで構成)。もちろん役割はウイルスRNAの複製。
  • ウイルスRNAが別の細胞に移動するためのタンパク質。
  • 細胞表面に置いてきたウイスルの外殻と同じタンパク質(複製したウイルスRNAが、これにまた入って別の細胞まで移動する)。

という、必要最低限の機能しか持っていないが、増殖するための材料は全部揃っている。そして、リボソームで作ったウイルス外殻や、RNAポリメラーゼで作った複製ウイルスRNAがどんどん細胞内で増え続け、増えすぎると細胞が死滅し、ウイルスRNAが再び細胞外に放出され別の細胞で増殖を開始するというわけである。
なお、インフルエンザの塩基数は14000個、タンパク質は11個。エイズウイルスの塩基数は9700個、タンパク質は20個である。ちなみにDNAについてで書いた生物の塩基数と比較すると、その数差は歴然である。
さて、今回は一本鎖RNA(+)ウイスルが、どのようにして細胞内で増殖するかについて話した。次回は他のウイルスの種類と増え方について解説しよう。