蒸留

酒の分類について書くに当たり、どういう書き方をするにせよ、最初に書いておかなければならない区分がある。まずは「醸造酒」「蒸留酒」「混成酒」の3つに大別しないといけない。

「糖食べたらアルコール出ちゃった」したもの

醸造酒を蒸留したもの

  • 混成酒

蒸留酒に混ぜ物をしたもの

このうち「糖食べたらアルコール出ちゃった」はいいとして、混成酒の「混ぜ物」の定義も置いておくと、残るキーワードは「蒸留」である。酒の分類を考える時に蒸留は重要である。
まずは言葉で説明しよう。蒸留には「単式蒸留」と「連続式蒸留」の2種類がある。焼酎で考えると、原料の風味豊かな乙種の本格焼酎は単式蒸留、水で薄めた純粋アルコールの甲種のホワイトリカー(大五郎とか純とか)は連続式蒸留である。ではそれぞれの原理を説明しよう。
まずは単式蒸留。ヤカンの口にホースを挿して、ホースの中央部分を氷のたっぷり入ったバケツに入れます。ホースの逆の先端は、低い位置にボウルでも置いておいて下さい。んで、ヤカンの中に樹教授の作ったどぶろくを入れて、フタを閉め、ヤカンに火をかけます。

するとどうでしょう。エチルアルコールの沸点は78.3℃なので、沸点が100℃の水が蒸発する前にエチルアルコールはどんどん蒸発します(90℃くらいで沸騰)。フタは閉まっているので、ヤカンの口から気化したエチルアルコールの蒸気は出て行きます。そしてホースを通って氷の間を通ると、蒸気は冷やされて再び液化します。これをボウルに集めると単式蒸留の一丁上がりです。ヤカンの中には蒸発できない米が残ります。なお、一度の蒸留で通常アルコール度数は3倍になります。
なお、単式蒸留のうち、ヤカンの内部の気圧を下げて蒸留する「減圧蒸留」という方式もあります。例えばヤカンの内部を真空にすれば、沸点は50℃まで下がる。すると、温度が上がらないので成分が変化せず、また、雑味が少なくなるという利点があります。逆に言うと常圧蒸留では焦げ臭さや、多くの微量成分が出てしまうので、くせはありますが、芳醇で豊かな風味になります。
んで、連続式蒸留なんだけど、これは説明しづらい。Webで検索しても、連続式蒸留がわかってる人にしかわからない説明しか無いでやんの。要するにエチルアルコール度数が100%に近い純度を得られる蒸留方式と思って頂きたい。参考文献の中で一番わかりやすい説明がされていたのは「シングルモルトを愉しむ」(光文社新書(72))の121ページからだった。一応Webでそこそこ詳しいのはここを見つけた。

サントリー WHISKY MUSEUM ウイスキーをつくる 蒸溜の話 蒸溜の方法

連続式蒸留で蒸留された酒の特徴は、まず同量の材料から、単式より多くのアルコールを得られる事である。単式の場合は蒸留が終わった後の粕にも多くのアルコールが残っているが、連続式の場合は最後の1滴までアルコールを絞り出せる。また、得たアルコールは純アルコールに近いのも特徴だが、純アルコールに近いながらも、原料の風味が微妙に残っている事である。このあたりは焼酎よりウイスキーの方が話がしやすい。ブレンデッド・ウイスキーは単式蒸留のモルトウイスキーと、連続式蒸留のグレーンウイスキーブレンドしたものだが、以下のページの言を借りると、
「味噌汁にたとえるならば、ダシはグレーン、味噌はモルトということになるんです」
という事であり、蒸留方式はどちらが上という事ではなく、目的によって使い分けるべきものだという事がわかるだろう。

「All About」 初心者にすすめる、一瓶。第一回 グレーンはダシ、モルトは味噌

連続式蒸留の蒸留方法はそのうちちゃんと書きます。