発酵について・基礎2

前回は酵素について説明したので、今回はいきなり解糖経路について解説する。解糖経路はEMP経路とも言い、酵母のアルコール発酵や、筋肉内での解糖でも行われている代謝である。
とは言え、専門用語の羅列に終わるので、あんまり面白くは無い。要するにブドウ糖が、どのような酵素の力で、どのような中間物質を経て、エチルアルコールになって「出ちゃった」になるかのデータの掲示に留まる。
説明を始める前に、Webで「なんか解糖系の解説ページねーかなー」と思って探してみたら、流石にネットは広大なだけあって、いいページが見つかった。
由良敬のホームページ 解糖系 解糖系プレゼンテーション
もうこのプレゼンがあれば、解説いらないわってなもんだが、そーゆーわけにもいかないので、解説はこっちで入れる。ちなみに中公新書(939)「発酵」(小泉武夫)の99ページで紹介されている「ブドウ糖からエチルアルコールへの経路」も同じ事を書いているので、持っている人はそっちも参考にするべし。

  • スライド1〜6

まだ未勉強。要するに生体内(ヒトも酵母も)ではATPという物質によってエネルギーが賄われているが、こいつが大量に必要な上にすぐに消費されてしまうので、生体内で合成しないと間に合わないよ、という話。

  • スライド8

ブドウ糖1分子が、ピルビン酸2分子に至る過程でATP2分子が合成されます。

  • スライド9

解糖系全回路、「発酵」の解糖経路に同じ。酸の名称の違いはわかってください。

  • スライド10〜12
段階 反応前 反応後 使用される酵素 補酵素
ブドウ糖グルコース グルコース6−リン酸 ヘキソキナーゼ ATP消費
グルコース6−リン酸 フルクトース6−リン酸 グルコースリン酸イソメラーゼ  
フルクトース6−リン酸 フルクトース1,6−ビスリン酸 ホスホフルクトキナー ATP消費
  • スライド13

フルクトース1,6−ビスリン酸は酵素アルドラーゼによってジヒドロキアセトンリン酸と
グリセルアルデヒド3−リン酸に分解される。

  • スライド14

ジヒドロキアセトンリン酸は酵素トリオースリン酸イソメラーゼによってグリセルアルデヒド3−リン酸になる。
この段階でグルコースはグリセルアルデヒド3−リン酸2分子に分解される。

  • スライド15〜19
段階 反応前 反応後 使用される酵素 補酵素
グリセルアルデヒド3−リン酸 1,3−ビスホスホグリセリン グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ 1NAD+還元
1,3−ビスホスホグリセリン 3−ホスホグリセリン ホスホグリセリン酸キナーゼ ATP生成
3−ホスホグリセリン 2−ホスホグリセリン ホスホグリセロムターゼ  
2−ホスホグリセリン ホスホエノールピルビン酸 エノラーゼ 1H2O生成
10 ホスホエノールピルビン酸 ピルビン酸 ピルビン酸キナーゼ ATP生成
段階 反応前 反応後 使用される酵素 補酵素
  ピルビン酸 アセトアルデヒド ピルビン酸脱炭酸酵素 CO2生成
  アセトアルデヒド エタノール アルコールデヒドロゲナーゼ 1NADH酸化

というわけで、12種類の酵素を使って、無事にブドウ糖エタノールに生成されましたー。これこそが「糖食べたらアルコール出ちゃった」の正体であります!こんなわけわかんねー反応を「糖食べたらアルコール出ちゃった」にまとめたもやしもん解説はスゲェよ。
なお、段階6以降でATPが2つ生成されているが、段階6以降は2分子の話なので、結果段階1〜3で2ATP消費、6〜10で4ATP生成されているので、差し引き2ATPの生成という事になる。
以上を化学式にするとこうなる。
C6H12O6(ブドウ糖)→2C2H5OH(エタノール)+2CO2(シュワシュワ)+56kcal
ちなみに以上書いたのは嫌気(空気無し)条件での話であって、空気があって呼吸ができれば、酵母ブドウ糖を完全に分解し、より多くのエネルギーを得られる。化学式は以下。
C6H12O6(ブドウ糖)+6O2(酸素)→6CO2+6H2O+686.5kcal
この場合はピルビン酸まで共通の反応で、そっからTCA回路という別の代謝経路に変化する。
というわけで、「糖食べたらアルコール出ちゃった」の解説終わりー。次回からは専門用語を使わないわかりやすい解説に戻す。